☆Taku Takahashi×Zeebra 苦境の中、新たに生まれる文化とは?

☆Taku Takahashi×Zeebra 苦境の中、新たに生まれる文化とは?

2020/08/11
インタビュー・テキスト
三宅正一、笹谷淳介
撮影:玉村敬太 編集:今井大介、久野剛士(CINRA.NET編集部)

コロナの中でいろいろと知恵を出して、どうやったら表現をできるのか……その想いがユーザーと繋がってカルチャーは生まれると思う。(☆Taku)

―コロナ以降の渋谷やクラブカルチャーの状況にはどんなことを感じていますか?

Zeebra:どうだろうね。コロナ以前だったらクラブで行われるパーティーをフィジカルで楽しんでいた部分があったと思うんだけど、いまはそうじゃないと思うんだよね。コロナ禍のいまだと、むしろカルチャーとしてクラブを楽しむ人が増えてきたんじゃないかなって。

クラブってお酒飲んで、外でうわーって楽しむっていうイメージが先行していると思うんだけど、いまはお酒を楽しく飲みたい人たちではなく音楽が好きでクラブに行っている人たちが、よりそのカルチャーを意識できるようなシチュエーションなのかなって思いますね。

―それってすごくポジティブな考え方ですよね。

Zeebra:うん。ポジティブすぎるかもしれないけど、その可能性はあるかなって思ってる。

―なるほど。Takuさんはいかがですか?

☆Taku:僕はこの間久しぶりに渋谷のバーに行ってきたんですけど、やっぱり人の数はまだ戻ってきていなかったし、入店を制限しなきゃいけないことを考えるとお店の人たちは大変だなと直に感じましたね。

あと、これはDJ側の感覚なんですけど、いまblock.fmでタバコのgloさんとコラボしてクリエイターの配信ライブなどを行なっていて、その会場としてclub asiaさんから配信したんです。そこで感じたのは、お客さんはいないんだけど大きなサウンドシステムで音を流すっていう気持ちよさ。これはリアルな現場でしか体感できないなと思いましたね。

☆Taku Takahashi

Zeebra:それは間違いないね! 確かにきちんとしたサウンドシステムで音を出すと全然違うもんね。いままでは当たり前だと思っていたけど、コロナ禍でなくなってから気づくみたいなことかもしれないよね。

☆Taku:あと、ジブさんが先ほどおっしゃっていた「よりカルチャーを強く意識する」ってのはまさにその通りで、クリエイター側からしてみると、コロナの中でいろいろと知恵を出して、どうやったら表現をできるのか、作品を作れるのかってところと向き合っているんですよね。その想いがユーザーと繋がってカルチャーは生まれると思うし。

あと、昔はクラブが好きで遊びに行っていたけど結婚してなかなか行きづらくなった人や、夜中まで遊ぶのが辛くなって足が遠のいた人もいて。コロナ禍のクラブシーンでは、配信を通してその人たちと再度、繋がれる機会が新たに生まれたのかなって思いますね。

Zeebra:そうかもね。普段はクラブの現場に行ってる人が主役で、オンライン配信を見てる人が脇役みたいな感じがあったけど、そうした区別がなくなるかもね。だっていまは全員が主役なわけだし。

☆Taku:楽しみ方の境界線はなくなってきますよね。ヒップホップや4つ打ちカルチャーには現場にいるのがいちばんカッコいいっていう風潮があるけど、少し堅苦しさを感じますよね。確かに現場は最高だし、カルチャーが生まれる発信源ではあるんですけどね。

Zeebra:まあ、少し悪い言い方をすれば、凝り固まっているというかね? そういう意味で言うと、いまってクリエイターみんながこのコロナ禍で果たしてどうやったら表現できるかってこと自体をクリエイトしてるじゃない? それってすごくクリエイティブなことだと思うんだよね。

だから、極端な言い方になってしまって申し訳ないんだけど、そもそもクリエイティビティの低い人はこの壁は乗り越えられないかもしれない。逆にこれを乗り越えた連中はすごく優秀なクリエイターだと思うから、そこが試されている時期だと思って俺も工夫していきたいな。

Zeebra

☆Taku:共感しますね。これは確かダーウィンだったと思うんですけど、「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」って言葉あるんです。まさにいまそこが求められていると思うんですね。あともう1つ重要だと思うのは「抑圧」。

いままでさまざまジャンルが生まれてきましたけど、その背景にはポジティブなものだけではなく抑圧されたことから生まれてくるジャンルもあったわけで、例えばヒップホップでいえば、人種的に抑圧されている人たちがどうやって楽しむかっていうところがルーツになっているし、すべてを抑圧で片づけるのはよくないけど、何か負荷がかかっているときに生まれるカルチャーがあるということなんですよね。

Zeebra:それこそ10年後、「あのときだったからこそ、こういうジャンルがいっぱいあったんだね!」と言われるようになると思う。そしてそのいくつかが形を変えてずっと残っていくと思うな。

例えば、みなさんも感じていることだと思うけど、Zoomが生活の一部になっているじゃないですか? でもアレって前からあったし、あんなに簡単なツールなのに誰も使ってなかった。だから科学が進歩しても使う側が進歩しないと意味がないというか、今回は本当に必要に迫られて、みんながやり始めたと思うんですけど、おそらくコロナが落ち着いてもZoomは使われ続けると思います。

☆Taku:同感ですね。

☆Taku Takahashi

―コロナ禍以降、Zeebraさんはクラブ側から相談されることも多いのではないですか?

Zeebra:直接的に相談はないけど、リアルな話をすることもあって。もし箱を閉めるとなると大きいところから閉めないといけないとか、家賃に関しても払わないと大家さんも打撃を受けちゃうわけで、これはもう事業者だけの問題ではないんですよね。

それこそこの間、ダンス議連やナイトタイムエコノミー議連に出席しましたけど、そこでも同じような話題が出てきて、クラブがダメということになると、もちろんテナントオーナーも大変だし、そこで働く人たち、演者も大変になってくる。いろんな分野の会社もたくさん関わっているわけだし、1つの産業と考えたときに、どこか1つが勝ち抜けできる状況ではないんです。どうやったら痛み分けできるかを考えていかないといけないと思いますね。

―そういった現状を踏まえて、クラウドファンディングを実施している箱も数多くありますよね。

☆Taku:クラウドファンディングは、みんなの気持ちが集まってとてもいいことだと思うんですけど、それでもやはりキツい部分があると思うんですよね。その中で箱を使った企画、箱を使ってどう配信していくか、みなさん工夫されています。ただ、それでもまだまだ苦しい状況ってのが正直あると思います。僕らも苦しいですし。

―それこそ来年から通常通り営業できる保証もないですもんね。

☆Taku:そうなんですよ。そこを期待して動いていくわけにはいかなくて。もちろん楽観的に考えたい部分もありますし、クラブやライブハウスのイベントやフェスなど、いろんなことしたいっていう気持ちはある。だから日程を調整しなんとか準備しつつも、本当に何が起きるか分からないっていうのはこれから変わらないと思うから、しばらくみんなが抱えなきゃいけない問題だと思いますね。

左から:Zeebra、☆Taku Takahashi

イベント情報

SUMMER BOMB 2020 ONLINE
SUMMER BOMB 2020 ONLINE

出演アーティスト:AKLO / BADHOP / JAGGLA / JP THE WAVY / J-REXXX / Leon Fanourakis / MIGHTY JAM ROCK(JUMBO MAATCH, TAKAFIN, BOXER KID)/ Novel Core / Shurkn Pap / SKY-HI / SOUL SCREAM / Tokyo Young Vision / ¥ellow Bucks / Zeebra / テークエム / 阿修羅MIC

配信日程:2020年8月22日(土)15:30~21:30予定
※見逃し視聴期間2020年8月22日(土)21:00~9月21日(月)23:59
放送局:ABEMA(PAY PER VIEW)
視聴料金:ABEMAコイン:2,500コイン(3,000円相当)
販売日時:2020年8月7日(金)12時~9月21日(月)23:59
※イベントを全てをご覧頂く為には9月21日の18時迄のご購入を推奨致します。

※本公演は、ABEMAにて独占生配信です。
※本公演は、有料となります。ABEMAプレミアムの方もコンテンツごとのご購入が必要になります。
※本公演は追っかけ再生の対象番組となります。

プロフィール

Zeebra(じぶら)

東京を代表するヒップホップ・アクティビスト。レーベル「GRAND MASTER」 代表、ネットラジオ局「WREP」局長。1997年、ソロとしてメジャーデビュー。日本語におけるラップを新たな次元へと引き上げ、ヒップホップ・シーンの拡大に貢献した立役者。常に上のレベルを追求し、その存在感と行動力は男女を問わず世代を跨ぎカリスマ的存在となっている。2014年、よりよいクラブとクラブカルチャーの創造を目標とする団体「クラブとクラブカルチャーを守る会」を発足。自らが初代会長として活動し、改正風営法の施行(2016年6月)に大きく貢献した。また、渋谷区から『渋谷区観光大使ナイトアンバサダー』に任命され、オランダ・アムステルダムで開催された世界28カ国参加の国際会議『NIGHT MAYOR SUMMIT 2016』に参加し登壇した。近年ではラップ・ブームの立役者として、MCバトル番組「フリースタイルダンジョン(テレビ朝日)」や「ハイスクールダンジョン(ABEMA)」のオーガナイズ、渋谷区の中学校にて「日本語ラップ講座」の特別講師を務め、2017年9月からは慶應義塾大学(三田キャンパス)にて現代芸術の講師として教鞭をとるなど、幅広く活動を展開している。

☆Taku Takahashi(たく たかはし)

DJ、プロデューサー。1998年にm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやRemix制作を行う。“Incoming... TAKU Remix”で「beatport」の『beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS』を日本人として初めて獲得し、その実力を証明した。アニメ『Panty&Stocking with Garterbelt』、ドラマ・映画『信長協奏曲』、ゲーム『ロード オブ ヴァーミリオン III』など様々な分野でサウンドトラックも監修。また、国内外でのDJ活動でクラブシーンでも絶大なる支持を集め、LOUDの“DJ50/50”ランキング国内の部で3年連続1位を獲得し、日本を牽引する存在としてTOP DJの仲間入りを果たした。自身が立ち上げた日本初のダンスミュージック専門インターネットラジオ&ポップカルチャーメディア「block.fm」は7周年に突入し、新たな音楽ムーブメントの起点となっている。2018年3月7日には、15年ぶりに初代メンバーLISAが復帰しリユニオンしたm-floのNEW EP『the tripod e.p.2』をリリース予定。

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