マネタイズは悪いこと? 企業がソーシャルアクションを継続するために
2つ目のテーマは、「企業がソーシャルアクションに取り組む意義」。企業、個人、NPOとそれぞれ異なる立場からソーシャルアクションに関わっている目的意識について意見が交わされた。
永野:ただ利益を上げるだけじゃなく、社会に還元することでファンも増えていきますし、理解も増して、結果的にビジネスをしやすくもなります。どのような課題に取り組むかはビジネスによって違いますが、私たちの場合は若い人たちが人と出会うことをビジネスにしているので、そこに対して何を還元できるかを考えています。
石井:自社の収益だけを考えるなら「しかたなくない」プロジェクトをやるよりも、広告宣伝費を費やしてテレビCMを流したほうが早く結果が出ますが、それではサービスを通じてしか世の中とコミュニケーションが取れません。「しかたなくない」という枠組みがあることで、学校や職場の働き方やパートナーとの会話のようなさまざまな文脈につなげることができますし、だから社名を前面に出すことをしていないんです。
ソーシャルアクションを継続的に行なっていくためには、持続可能な仕組みをつくりだすことも欠かせない。シオリーヌさんは性教育の発信や子育て支援事業に取り組むため、産後ケア事業を行なう株式会社Rineを10月に立ち上げた。
シオリーヌ:いま自分が取り組んでいる性教育や産後ケアの領域は、どちらも収益を得ることが非常に難しくて、誰かがやるべきという使命感を持っている人たちが持ち出しや助成金でなんとか続けているケースが多いです。それでは再現性が低いし、いま携わっている人の思いが途切れたらなくなってしまいます。社会に必要なものをきちんとビジネスにしていくことで持続していきたいという思いがあるんです。
石井:マネタイズは悪いことじゃなくて、事業を続けていくために必要なガソリンです。社会問題の解決をしていくときに補助金や寄付金も当然必要だけど、それを前提に座組みをしていくよりは対価を払えるかたちにすることにどれだけ知恵を絞れるかにエネルギーを使ったほうがいろんな人が真似できますよね。
能條:私もNO YOUTH NO JAPANの活動をやっているなかで、自分がやめてしまったら続かないかもしれないと考えると、仕事にしていく必要性を感じています。ビジネスとして持続可能にしてゆく方法とともに、日本では非営利セクターが弱すぎるし寄付の文化もないので、そちらを広げていく方向もありだと思うんです。NPOと企業が協業・共創できていくといいですよね。
永野:一人や一社で続けるのはとてもしんどいですが、続けていると同じ志を持った人たちのコミュニティーができていきます。そのためにも、企業色を前面に出すのではなく、普遍的なメッセージを出すことで賛同者や仲間も増えていく余地を残すことが大事だと思います。
イベント情報
- SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2022
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日程:2022年11月8日(火)~11月13日(日)
入場料:無料
プロデューサー:金山淳吾(一般財団法人渋谷区観光協会代表理事) / 長田新子(一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長)
主催:一般社団法人渋谷未来デザイン
共催:渋谷区