社会課題の現場をVR技術で疑似体験する試験サービスがスタート

社会課題の現場をVR技術で疑似体験する試験サービスがスタート

2020/06/23

他人の心情や置かれている環境を理解するのは難しい。話を聞いただけ、資料を読んだだけで理解できるのは、せいぜい表面上のことだ。自分がその人と同じ状況に置かれてみて、ようやく本質的な部分が見え始めるだろう。

ただ、その人と同じ状況に立つというのは、それほど簡単なことじゃない。場所・時間といった要素ならまだ合わせることができるが、体格や能力、人間関係などといった要素を合わせることは困難だ。

そこで、VR(バーチャルリアリティ)技術を「社会課題の疑似体験」に活用しようという試みがスタートしている。

本人の視点に立てるVR技術

ヘッドマウントディスプレイなどで動きをトラッキングし、鑑賞者の頭の動きに合わせて上下前後左右の360度を取り囲む映像を描写する技術がVR技術だ。これによって、単なる映像に過ぎないのに、鑑賞者は自分がその世界に入り込んだように感じられる。VR技術なら、宇宙だろうと海中だろうと、どんな場所でも体感が可能。

ゲームなどでは、幼い子どもを体感できるVR作品も存在する。幼い子どもは身長が低いので目線が低く、しかも非力だ。テーブルに手が届かない、自力ではドアを開けることができないなどといった体験は、忘れてしまった子ども時代を思い出させてくれる。

VR技術を使うとこのような表現が可能になるので、他人と同じ状況をかなりの精度で再現することができる。

VR技術で社会課題を疑似体験

株式会社日本総合研究所、特定非営利活動法人クロスフィールズ、株式会社Synamonは、このVR技術を使って社会課題を疑似体験させ、その効果を検証する試験サービスを開始した。

試験サービスの参加者は、VR技術を使ってカンボジアの農村での住居内の生活や、インド・バラナシ周辺の都市・農村での生活、フィリピン・マニラの住居を持たない人など向けのコンテナハウスでの生活などを体験。参加者同士の対話を通じて理解を深めるという試みだ。

社会的な課題の解決には、解決に関わる人員の多くが、社会課題の深刻さや解決の必要性について深く理解している必要がある。そのためには、現場を体験することが重要だが、深く理解できるほど現場に関わるのは簡単ではない。そこで、VR技術を使って現場を体感できるようにしようというわけだ。この試験サービスがよい結果を生み、社会課題の解決に繋がることを心より祈る。

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