新型コロナウイルスの影響によって2020年上半期は、大きなイベントが軒並み中止や延期になった。その余波は下半期にも表れており、コロナ対策を前提としたイベント開催が当たり前になっている。中には、イベント自体の見直しを余儀なくされたものもある。だが、この逆風をむしろ推進力にして、渋谷の新たなカルチャーを生み出すために活かそうとする動きも表れはじめた。
「渋谷渦渦 ~あつまれ!SHIBUYAイベントチャレンジ~」もそのひとつ。本プログラムでは、ポップカルチャーに注力している人を広く公募し、会場や資金補助、公開の場などを東急が提供していくという。「挑戦したいのにコロナのせいで挑戦できない」という人たちを応援したいという本プログラムは、どのような意図があるのだろうか。その詳細について、プログラムを手掛ける東急株式会社の星野ゆりと五十嵐友莉花に伺った。
エンターテイメントってもっとゆるくてもいいよね? そんな疑問からこのプログラムははじまった
―まずは、今回の公募プログラムが立ち上がった経緯について教えてください。
星野:私たち東急は、「エンタテイメントシティSHIBUYA」をスローガンに、おもしろいコンテンツが生まれ続ける街を目指して「渋谷街ブランディング(通称:街ブラ)」というプロジェクトを2015年頃からから手掛けてきました。このときはテック、ファッション、ジャーナリズムのジャンルにフォーカスしたイベントを開催して一定の成果を出せたと考えています。
ただ、昨今の新型コロナウイルスの問題で、オフラインのイベントを継続的に開催していくことが難しくなってしまいました。そこでオンライン配信に切り替えるなどの対応をしてきたのですが、それまで紹介や持ち込みで企画を提案していただく機会がほとんどだったので、渋谷を拠点に発信をしたいと考えている方々と新たに交流することができなくなりました。そこで「街ブラ」のコンセプト自体を見直すことにしました。
星野ゆり(ほしの ゆり)
東急株式会社 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ 企画担当
2016年にグループ会社の東急メディア・コミュニケーションズに入社。東急エージェンシーへの出向でプロモーションに携わったのち、2018年より東急株式会社に出向。渋谷で開催されるイベントへの関与による渋谷のブランディングを実施し、現在に至る。好きなものは名探偵コナン。最近は「あつまれ どうぶつの森」に夢中だが、家にWi-Fiが通っていないので誰の島にも行けていない。
五十嵐:今は在宅勤務にシフトしている企業も増えているので、そもそも渋谷に足を運ぶ人が減っています。それでも、コロナが落ち着いたら、また渋谷に行きたいと思ってもらう、きっかけを作りたいと考えました。そこで、今回のプログラムではイベント企画を生業としていない個人や法人・団体にターゲットを絞り、注力ジャンルも「ポップカルチャー」に切り替えました。
五十嵐友莉花(いがらし ゆりか)
東急株式会社 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ 企画担当 主事
2014年に東急電鉄(現 東急)に入社。渋谷ヒカリエの文化用途施設の運営を経験し、建物をより面白くするためのカルチャーづくりに尽力。2019年より現部署に異動し、東急の保有アセットを活用した興行や新規事業の検討を行う。POPSのデイリーランキングをチェックするのが日課。最近はテトリスにハマりe-sportsプレーヤーを目指し、日々トレーニング中。
―どうして注力ジャンルをポップカルチャーに定めたのでしょうか?
星野:街ブラの見直しを迫られたときに、「エンターテイメントとはなんぞや?」ということを考えることにしたのですが、「もっとゆるくてもいいよね」っていう話になったんです。
五十嵐:言葉を選ばずに言うと、これまで私たちが構想していたエンターテイメントシティは、ちょっと高尚な感じが強かったというか。もっと幅広い属性の人たちが参加しやすかったり、みんなが喋りやすいことってどんなことだろうと考えたときに浮かんだのが、ポップカルチャーでした。
それは私自身が今の部署に異動する前に、渋谷ヒカリエの8階にある「8/(ハチ)」というフロアの運営を担当していたときに感じたことでもあって。そこでは、信念を持っておもしろいカルチャーを伝えたいという人がイベントスペースを活用してくれていました。 そこでの対話を通じて私がいろんな価値観を知り、様々な経験をすることができたので、そうした体験をもっと多くの人にしてもらいたいと思ったんです。
星野:また、これまで協賛してきたイベントは場所や広告媒体を提供するだけのことがほとんどでした。でも、それまで私たちが掲げていたビジョンがコロナで揺らいだことで、今までと違った発想で取り組んでもいいんじゃないかと考えるようになって。新しいことに挑戦したいけどコロナの状況で機会が少ないことも踏まえ、今回は、すでに実績のある人をあえて公募の対象にしていないんです。
五十嵐:東急って「みんなで作っていこうぜ!」っていう意識がけっこう強いんです。いろんな人たちを巻き込みながら文化を作っていくのが好きというか。だからこそ、おもしろい風を吹かせられるんじゃないかなって思うんです。極端なことを言えば、中高生とかおじいちゃんおばあちゃんにもぜひ参加してほしいなと思っています。
プログラム情報
- 『渋谷渦渦 ~あつまれ!SHIBUYAイベントチャレンジ~』
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ポップカルチャーをテーマに東京カルチャーカルチャーを会場としたリアル+オンラインのハイブリッド型開催イベントの企画公募プログラム。採択者は2021年2~3月の間で実際にイベントを開催できる。応募受付期間は10/23(金)~11/23(月・祝)まで。
プロフィール
- 星野ゆり(ほしの ゆり)
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東急株式会社 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ 企画担当
2016年にグループ会社の東急メディア・コミュニケーションズに入社。東急エージェンシーへの出向でプロモーションに携わったのち、2018年より東急株式会社に出向。渋谷で開催されるイベントへの関与による渋谷のブランディングを実施し、現在に至る。好きなものは名探偵コナン。最近は「あつまれ どうぶつの森」に夢中だが、家にWi-Fiが通っていないので誰の島にも行けていない。
- 五十嵐友莉花(いがらし ゆりか)
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東急株式会社 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ 企画担当 主事
2014年に東急電鉄(現 東急)に入社。渋谷ヒカリエの文化用途施設の運営を経験し、建物をより面白くするためのカルチャーづくりに尽力。2019年より現部署に異動し、東急の保有アセットを活用した興行や新規事業の検討を行う。POPSのデイリーランキングをチェックするのが日課。最近はテトリスにハマりe-sportsプレーヤーを目指し、日々トレーニング中。