齋藤精一が語るテック屋の危機感「技術の時代こそ哲学を」

齋藤精一が語るテック屋の危機感「技術の時代こそ哲学を」

2020/04/23
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:カド翔真 編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)

2020年3月より通信各社から「5G」がお披露目となり、すでに2021年まで延期が発表された東京五輪に向けて、街やテクノロジーはこれまでよりさらに進化していく。これらの変化によって、私たちの生活は実際にどのように変わっていくのだろうか。テクノロジーの領域は、私たち生活者にとってわからないことだらけで、ただその変化にさらされるばかりだ。

最先端のメディアアートやインタラクティブなイベント、テクノロジーを駆使した広告プロジェクトなどを通じて「都市デザイン」の最先端を担う、Rhizomatiks Architecture主宰の齋藤精一。これまで建築家としてのキャリアを活かしながら、「人と社会の新しい関係づくり」をずっと模索し続けてきた。「時代の転換期には本来哲学が必要」と語る齋藤は、国家プロジェクトも多数抱え行政とも深い関わりを持ちながらも、テクノロジーがビジネス目線でばかり語られることに警鐘を鳴らす。

今回、新たに立ち上げたメディア『CUFtURE』では、そんな齋藤が気になっている国内外におけるテクノロジー×カルチャーの最新事情を紹介してもらいながら、急速な技術進化の時代に、私たちが考えなければならないことを聞いた。

※この取材は東京五輪延期決定前の3月19日に実施しています。

「都市開発」は、僕の担当領域がだんだん多岐にわたり過ぎてきて自分でもよく分からなくなってきました(笑)。

齋藤精一(さいとう せいいち)<br>1975年神奈川生まれ。Rhizomatiks Architecture主宰。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。2006年に株式会社ライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2018年、グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年、ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Lab促進会議有識者。
齋藤精一(さいとう せいいち)
1975年神奈川生まれ。Rhizomatiks Architecture主宰。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。2006年に株式会社ライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2018年、グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年、ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Lab促進会議有識者。

―まずは、齋藤さんがここ最近手掛けた、もしくは現在進行中のプロジェクトについて、話せる範囲でお聞かせいただけますか?

齋藤:今まさに手掛けているのが、話題の高輪ゲートウェイ駅周りのプロジェクトです。永山祐子さんが設計した駅前のイベントスペースが、東京五輪の公式サテライト会場になっている(3月19日時点)のですが、その中にあるJR東日本さんのパビリオン『A DAY ~ちょっとミライのつながるセカイ~』は僕が担当しています。

―前回のインタビュー(ライゾマ齋藤精一が訴える「東京にはボブ・マーリーが必要だ」)冒頭でおっしゃっていた、「前から仕込んでいる都市開発」の一つがこの高輪ゲートウェイだったのですね。

齋藤:僕の担当領域がだんだん多岐にわたり過ぎてきて自分でもよく分からなくなってきました(笑)。今年は東京五輪に向けた一般企業さんのアクティベーションも増えましたし、まだ発表前で具体的な企業名、ブランド名は言えないのですが、展示やその関連イベント、シアターなど表現媒体は全て活用して取り組んでいます。もちろん、引き続き都市開発や自治体のお手伝いも、基本的にはプランニングから実施、実装、運営まで行なっています。

―最近は行政案件もかなり増えているのですね。

齋藤:はい。去年10月には横須賀の無人島・猿島のイベント『Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島』を手掛けました。エントランスで携帯を封入し使用不可の状態にして、真っ暗な会場を周回しながらアーティストの作品を観覧してもらう、いわば「感覚を取り戻す」コンセプトだったのですが、こちらは自治体と予算の相談をする段階から関わりました。

とにかく、先鞭をつけて動かすのが僕たちの仕事で、前回のインタビューでご紹介させていただいた新宿御苑のイベント『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』も、電気を夜間使用する必要があるため環境庁に呼びかけ御苑内に電気工事を行うなど、ある意味「テストケース」としてPDCAの1周目を担う案件が多いですね。

『Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島』photo by Koichiro Kutsuna ©Sense Island 2019
『Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島』photo by Koichiro Kutsuna ©Sense Island 2019
『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』イメージ画像
『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』イメージ画像
『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』では、園内の一部で若手アーティストの作品が展示された。本作は、後藤映則による作品。
『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』では、園内の一部で若手アーティストの作品が展示された。本作は、後藤映則による作品。

プロフィール

齋藤精一(さいとう せいいち)

1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエイティブ職に携わり、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。フリーランスのクリエイターとして活躍後、2006年株式会社ライゾマティクス設立、2016年よりRhizomatiks Architectureを主宰。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター。現在、2018-19年グッドデザイン賞審査委員副委員長、2020年ドバイ万博クリエイティブアドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Lab促進会議有識者。

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『CUFtURE』(カフチャ)は、au 5Gや渋谷未来デザインなどが主導する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」とCINRA.NETが連携しながら、未来価値を生み出そうとする「テクノロジー」と「カルチャー」の横断的なチャレンジを紹介し、未来志向な人々の思想・哲学から新たなヒントを見つけていくメディアです。そしてそれらのヒントが、私たちの日々の暮らしや、街のあり方にどのような変化をもたらしていくのか、リサーチを続けていきます。