FKA Twigsがたどり着いた境地。テクノロジーと身体性の関係を探る

FKA Twigsがたどり着いた境地。テクノロジーと身体性の関係を探る

テキスト
木津毅
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

「フューチャリスティック(未来的)」なアーティスト、FKA Twigsのビジュアル表現

フューチャリスティック――すなわち、「未来的」であるとはどういうことだろうか?

昨年リリースした2ndアルバム『Magdalene』が世界的に高く評価され、アーティストとしての無二の存在感をさらに高めているFKA Twigsだが、彼女はその登場時から、つねにフューチャリスティックという形容がついて回ってきた。それはアンダーグラウンドのプロデューサーたちとのコラボレーションによるサウンドの先鋭性もさることながら、ビジュアル表現によるところも大きいように思われる。

たとえば、初期のFKA Twigsのイメージを決定づけた“Water Me”(『EP2』収録、2013年)のミュージックビデオ(以下、MV)。そこで彼女はボブルヘッド(首振り人形)のように顔を激しく左右に振り、極端に大きな瞳を見開いて呟くように歌っていた。ランダムなビートと、不穏だがどこか安らかさも漂う音像。まだミックステープ『&&&&&』をリリースしたばかりで謎に包まれていたアルカがプロデュースしたこのトラックをして、FKA Twigsの音楽を「アーティフィシャルR&B」などと呼ぶメディアもあった。ただ、アーティフィシャル(人工的)に機械的な存在、というのはMVのビジュアルにかなり引っ張られたイメージだろう。

FKA Twigs“Wate Me“MV。楽曲のプロデュースはアルカ、MVの監督はジェシー・カンダ

監督を務めたのは、当時アルカとのタッグで注目されていたビジュアルアーティストであるジェシー・カンダ。カンダの作品は奇形的な美や官能をモチーフとするものが多いが、人工的な質感のイメージもたびたび立ち現れる。同じく『EP2』収録で、カンダが監督を務めた“How's That”のMVでは、機械のようだが流体的に変動していく身体が暗闇のなかに映し出される。

同じくジェシー・カンダが監督を務めたFKA Twigs“How's That”MV。同曲もプロデュースはアルカ

FKA Twigs『EP2』(2013年)を聴く(Apple Musicはこちら

人工物が見せる「感情(のようなもの)」。初期作で見せたテクノロジーと身体の曖昧な境界

これらのMVに見られるような機械ないしはテクノロジーと身体の融合は、FKA Twigsのビジュアル表現に多く見られる主題である。この当時からFKA Twigsはしばしばビョークと比較されており、本人はどうもそのことに納得していないようだったが、それはカンダが生み出すイメージがクリス・カニンガム(Aphex Twin、ビョークらのMVを手掛ける映像作家)の諸作、とりわけいまでも傑作として名高いビョークの“All Is Full of Love”を連想させるところから来ている部分もあるのではないだろうか。2体のアンドロイドが交わす性愛――その鮮烈な映像は、機械と人間の境界がどこにあるのかを見る者に考えさせる。同様に、“Water Me”において無表情のまま首を振るわせるFKA Twigsは「機械的」だが、途中で彼女は涙を流す。人工物が見せる感情(のようなもの)――テクノロジーと身体の境界が曖昧になった場所こそが「未来的」なのではないかと……、初期のFKA Twigsが提示したのはひとまず、そのようなものだ。

クリス・カニンガムが手掛けた、ビョーク“All Is Full of Love”MV。1997年のアルバム『Homogenic』収録曲。MVは1999年発表

高い身体能力を活かした、よりフィジカルなパフォーマンスへ。緊縛などを用いて、生身の身体でしか表現しえない領域を探求する

ただ、そこであまりに「人工的」なイメージがつきすぎたこともあったのだろう、1stアルバム『LP1』(2014年)でFKA Twigsはよりフィジカルなパフォーマンススタイルを見せるようになっていく。幼い頃からのクラシックバレエの素養がある彼女は優れたダンサーでもあるが、“Video Girl”など、その高い身体能力を生かしたコンテンポラリーダンス風のMVを発表している。

とりわけ注目したいのが、FKA Twigs自ら監督した“Pendulum”のMVだ。

FKA Twigs自身が監督した“Pendulum”MV。2014年の1stアルバム『LP1』収録曲

何やらSF的に無機質な空間のなか、緊縛状態で宙づりにされるFKA Twigs。場面が切り替わると、CGで表現されたメタリックな質感の顔が出現し、最後には解き放たれた彼女が踊り、また、ハイトーンボイスで歌う。ここでもテクノロジーと身体の対峙が見られるが、前半の緊縛のパートではそれまでのビジュアル表現であまり見られなかった生々しいエロスによる緊張感が生み出されている。つまりそこでは、生身の身体でしか表現しえない領域が探求されているのだろう。

FKA Twigs『LP1』(2014年)を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報

FKA Twigs『Magdalene』日本盤
FKA Twigs
『Magdalene』日本盤(CD)

2019年11月8日(金)発売
価格:2,420円(税込)
Young Turks / Beat Records
YT191CDJP2

1. thousand eyes
2. home with you
3. sad day
4. holy terrain ft. Future
5. mary magdalene
6. fallen alien
7. mirrored heart
8. daybed
9. cellophane
10. cellophane, Live at The Wallace Collection(ボーナストラック)

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