5Gで変わる世界。アニメやゲームと現実はどう接近するか

5Gで変わる世界。アニメやゲームと現実はどう接近するか

テキスト
本多恵
編集:山田規裕(CINRA.NET編集部)
Jul.17 2020

1.『鬼滅の刃』日輪刀と水の呼吸

街ですれ違う小学生が、ごく自然に主人公・竈門炭治郎の耳飾りを身に着けている。『週刊少年ジャンプ』(集英社)での連載が終了した後も劇場版アニメの公開が心待ちにされるなど、とどまることを知らない人気の『鬼滅の刃』(作・吾峠呼世晴)。かつて誰もが悟空のカメハメ波を真似したように、『鬼滅の刃』に夢中になっている子どもたちが、炭治郎が鬼を斬る際に使う技・水の呼吸を使えるようになりたい! と憧れるのは当然の流れかもしれない。主人公の竈門炭治郎たち鬼殺隊が、鬼と戦うときに使う武器として登場する「日輪刀」。ここに5Gで実用可能となったIoT(Internet of Things)の技術を当てはめると、実際に技を出したかのようなリアルな体験が味わえそうだ。

TVアニメ「鬼滅の刃」ティザーPV

たとえば日輪刀にセンサーを取りつけ、ゴーグルを装着した使用者が刀を振る。その動きを5G回線を通して画面に投影すれば、刀の動きに合わせた効果が発動する様子をリアルタイムで見られるかもしれない。「水の呼吸」を発動するときの空気の流れや浮世絵のような美麗なエフェクトも、大容量通信によってアニメの感動そのままに体験できるだろう。

また、ここで新たに紹介したいのが「ハプティックフィードバック」という技術。ハプティック(Haptic)とは「触覚の」という意味で、すでに遠隔地でのロボット操作に応用されている。実際に2018年にJTBとKDDIが小笠原村の観光局やTelexistence社、竹芝エリアマネジメントと協力して開催した「遠隔旅行」のイベントでは、ロボットを遠隔操作することでウミガメの赤ちゃんの甲羅の固い感触をリアルに味わう体験が実証された。この「ハプティックフィードバック」を応用することで、日輪刀を握った時の重みや技を繰り出したときの反動をリアルに感じることができるかもしれない。さらに、日輪刀の色や呼吸の種類は使い手によって変化するので、AIで日輪刀を持つ人の特性を分析して技の効果の色やエフェクトを変化させるのも面白そうだ。「自分はなんの呼吸の使い手気分を味わってみようか」と想像するだけで、わくわくしてしまう。

IoTとは:モノのインターネット。これまでインターネットはコンピュータやスマホ同士を接続する技術という認識が主流だったが、5Gの通信技術を用いることで、センサーや通信機能を持った家電や自家用車などの「モノ」同士が、映像や音声などさまざまなデータを伝達できる。

2.『ドラえもん』のタケコプター代わりの1人乗りヘリコプター

タケコプターを「1人乗りの空飛ぶ乗りもの」と定義すると、その理想に限りなく近い例がすでに存在している。産業用無人ヘリコプターなどを開発するヒロボーが2012年に開発した、電動式の1人乗りヘリコプターだ。実用に至るには、燃料や法律など、クリアしなければならない壁が多数あるのだが、5Gの高速大容量や低遅延性を活用すれば、離れた施設からの遠隔監視や制御が可能になる。衛星から受信した詳細な位置情報や、天候などのデータをAIが瞬時に分析し、安全かつ長時間にわたる自動運転が実現できるかもしれない。さらに、5Gでは通信デバイスの電池寿命が10倍に向上するといわれていることから、『ドラえもん』でたびたび起こる「電池切れで地面に落下」という危機とも無縁になりそうだ。

一人乗りの電動ヘリコプターに関する解説動画

3.ホロアバターで「セーラームーン」気分

「ムーンプリズム・パワー! メイクアップ!」というセリフを叫ぶと、七色の光が広がり手足を包んだリボンがセーラー戦士の衣装に変わる。ネイルが1本1本色づく演出に憧れてオモチャのマニキュアを塗り、ささやかな変身願望を満たす……。そんな少女時代を過ごしてきた本記事の著者が、「5Gでアニメの世界に近づけるとしたらなにがしたいか?」と考えたときに思いついたのが、まさに「セーラームーンに変身したい」という願望だった。この例で応用したいのは、AR技術を使って自分の顔に動物の耳や鼻などのCGを重ねて遊べるカメラアプリだ。もし5Gによってさらに遅延なくデータを通信することができれば、リアルタイム動画という形で憧れの変身シーンを味わえるだろう。たとえば撮影した使用者の体型を高速で分析し、実際の動きに合わせて、コスチュームを画面に映し出すといった方法はとれないだろうか。画面越しではあるが、あの美少女戦士に変身したかのような高揚感はたっぷりと味わえそうだ。

4.好きなアニメキャラクターとドライブ

SNS上でファンを大量発生させた、『名探偵コナン』(小学館)の人気キャラクター・安室透。映画『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年)で魅せた華麗なカーチェイスなど、彼が運転する白いスポーツカーも大きな話題となった。4DXで上映された映画では、まるで彼の助手席に座って守られているような臨場感があったが、今後は好きなアニメキャラクターの助手席に乗ってドライブができようになるかもしない。

劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』予告映像

そのために思い出されるのは、AR技術を使った3Dのバーチャルアバターだ。2019年に日産がNTTドコモと協力して、3Dのバーチャルアバターを車内に出現させ、乗客とリアルタイムで会話する実験に成功している。もちろん、あくまでアバターなのでキャラクターが実在するわけではない。しかし離れた場所でアバターを操作する第三者の存在はあるものの、その動作や音声はデータ化されるので、限りなく動作はキャラクターに近づけることができるだろう。5Gを使えば大容量&低遅延で、違和感なく3Dアバターが動き、会話を楽しむことができる。世の中に自動運転の乗用車が普及する頃には、自分で運転することなく好きなキャラクターとドライブする日常が待っているのかもしれない。

自動車の中で行われた、3Dのバーチャルアバターが乗客とリアルタイムで会話する実験の様子

5.アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の人工知能ホロアバター

2012年にテレビシリーズ1作目がフジテレビ『ノイタミナ』で放送されて以来、いまもなおファンに絶大な人気を誇るアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』。物語の舞台は2112年で、国民は「シビュラ」と呼ばれるシステムによって管理され、ITやドローンでオートメーション化された生活を送っている。印象的なのはヒロイン・常森朱が朝自宅で目覚めると、クラゲのような外見をした人工知能ホロアバター「キャンディ」に、専属コンシェルジュのように世話を焼かれるシーン。複数表示されたモニターにはその日の天気やニュースが表示され、キャンディが1日のスケジュールを読み上げる。朝食は前日の摂取カロリーに基づいて適切なメニューが提案され、朱が「チャイニーズテイストで」とオーダーすると電子調理器で自動的に用意される。

「PSYCHO-PASS サイコパス」プロジェクトPV

5Gによって、IoTが日常化すれば、こんな近未来的な生活も現実のものになるかもしれない。また、実際5Gで通信が進化すると、それに応じて身につけるウェアラブルデバイスも多様化するといわれている。現在でも、Apple Watchなどのスマートウォッチを使えば、脈拍や移動距離をモニターすることも可能だが、5G環境が当たり前になれば、それらのデータが自動的に生活家電と接続。たとえば冷蔵庫や「ヘルシオ ホットクック」(シャープ)などの自動調理鍋が連動して、その日の自分にピッタリな献立がすぐさま用意される日々も、きっと夢ではない。

5.より没入感が高まるeスポーツ

XRの分野が充実することで、さらに盛り上がりを見せるのが「eスポーツ」の世界。現実の世界をベースにAR(拡張現実)とVR(仮想現実)を組み合わせることで没入感を高めることができるMRを用いれば、ゲームの世界にすっぽりと入り込んでプレイできる。5Gの環境下なら、たとえば『Splatoon(スプラトゥーン)』(任天堂)で楽しめる「ナワバリバトル」を、渋谷やお台場などリアルの街で開催することもできるかもしれない。ゴーグルをつけて3Dアバターを操り、現実のビルや道路を塗りつぶす感覚とその映像を同時に味わったり、どちらの陣営が塗ったパーセンテージの判定も瞬時に算出できたりしそうだ。また、ここで先ほど「鬼滅の刃」の例で紹介した「ハプティックフィードバック」を用いれば、ローラーでインクを塗ったときの反動や感触、ボムを放ったときの衝撃もリアルに味わうことができるかもしれない。元々は建設機械の遠隔操作や遠隔医療の分野を想定した技術ということだが、5Gを通じてオンラインゲームに応用することで、未だかつてない体験ができそうだ。

没入感を高めるという点でもう1つ注目したいのが、7月4日に再開した「2020明治安田生命J1リーグ」に向けて名古屋グランパスエイトが打ち出す「MY HOME STADIUM - All for NAGOYA -」プロジェクトの事例だ。本プロジェクトでは「名古屋グランパス公式アプリ」を通して、サポーターとチームの双方向によるコミュニケーションを実現した。試合前の選手のウォーミングアップの様子やスタジアムで演奏される音楽をリアルタイムで配信することで、自宅にいてもスタジアムの空気を感じたり、ライブチャットや多彩な映像配信を活用することで遠隔地からの応援でもサポーター同士が強いつながりを感じる仕掛けをほどこした。リモート観戦といった新たな観戦体験が注目されるいま、5G回線は観客の熱量や場内の盛り上がりをリアルタイムで味わう感動を生み出してくれるだろう。たとえばこれらをオンラインゲームの観戦に応用すれば、自宅で実況動画を視聴しているファンも、まるで現場にいるかのようにプレイヤーを後押しする臨場感を味わい、ともにバトルを作り上げるムードを肌で感じることができるのではないだろうか。

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