東急×パルコ対談 再開発やコロナ後、次世代の渋谷を考える

東急×パルコ対談 再開発やコロナ後、次世代の渋谷を考える

2020/07/01
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

これまでさまざまなカルチャーを発信し続けてきた街・渋谷では、100年に一度と言われるほどの大規模開発が2027年度まで続く。その折り返し地点となったのが2019年だった。

昨年、東急グループが推進している駅周辺の9つの再開発プロジェクトの中心である「渋谷スクランブルスクエア」がオープン。さらに2016年から建て替え工事をしていた「渋谷PARCO」もリニューアルした。くわえて2020年内には、宮下公園あらため「MIYASHITA PARK」のオープンも控えている。

こうした再開発については、当然ながら賛否両論が渦巻いているわけだが、それは渋谷という街に特別な思い入れがある人が多いことの証でもあるだろう。過去への哀愁と未来への期待が折り重なるこの街の行方はどこに向かうのだろうか。東急株式会社の寄本健と浜本理恵、そして株式会社パルコの柏本高志と手塚千尋に、「まちづくり」の視点から渋谷の街の現在や未来について語っていただいた。また、今年開催されるはずだったオリンピックや、新型コロナウイルスによる街への影響など、今だからこそ聞きたいトピックについても尋ねた。

再開発で広がった渋谷の許容性。「遊びの街」だけでなく「働く街」「住む街」へ

左から:寄本健(東急株式会社)、柏本高志(株式会社パルコ)、浜本理恵(東急株式会社)、手塚千尋(株式会社パルコ)
左から:寄本健(東急株式会社)、柏本高志(株式会社パルコ)、浜本理恵(東急株式会社)、手塚千尋(株式会社パルコ)

―みなさんは以前からお知り合いだったんですか?

寄本:交流の場でけっこう会っています。ただ、最近はお互いに開業の準備で忙しかったこともあって、連携を取り合う時間的な余裕はなかったんですけど。

柏本:ほとんど同時期のオープンでしたもんね。渋谷スクランブルスクエアが2019年11月1日で、渋谷PARCOが2019年11月22日でしたから。

―ここ1年くらいで渋谷の風景が一気に様変わりした印象があります。そういった変化に対して、みなさんはどのように感じているのでしょうか?

寄本:これは答えになっているかわからないのですが、渋谷が大きく変わった最初のきっかけは2013年に東横線が地下化したことだと思います。それまで終着駅だったのが地下に潜って副都心線とつながった。それによって渋谷に人が来なくなるんじゃないかといった懸念も当時はあったのですが、結果として遠くからも人が訪れるようになりました。

再開発が進む渋谷駅前の様子(提供:東急株式会社)
再開発が進む渋谷駅前の様子(提供:東急株式会社)
地下化以前の東横線渋谷駅のホーム(提供:東急株式会社)
地下化以前の東横線渋谷駅のホーム(提供:東急株式会社)

寄本:また多くのIT系企業が渋谷にオフィスを構えたことで、それまでの「遊びの街」というイメージに「働く街」の要素が加わり、さらには「住む街」としても選択肢に入るようになっています。そういう渋谷の許容性みたいなものが、今回の再開発によってさらに広がっていくんじゃないかと思っています。

柏本:街の魅力って利便性がボトムにあると思うんですけど、それ以上のものが僕は必要だと思っていて。ただ、それをワンテーマで語ることはできないんですよね。渋谷にはファッション、音楽、映画、アートなどさまざまな芽があって、それがひとつずつ成長して、融合して、化学変化を起こして、それで街の魅力になったと思うんです。

僕は先ほど寄本さんがおっしゃっていた「許容性」という言葉がすごくいいなと感じたんですけど、特に渋谷は思想のセグメントがされていない印象があります。自分の範疇とは違うカルチャーも楽しめる人が集まっている。だから、スクランブル交差点のような観光の名所もあれば、昔の雰囲気を色濃く残すのんべい横丁やクラブカルチャーが盛んな道玄坂、さらには個性的なブティックが並んでいるキャットストリートや隠れた名店が点在する奥渋など、いくつものレイヤーが存在するんだと思うんです。そういった多様な価値観が、再開発によって新しい土壌が生まれることで、さらに育まれていくんじゃないかなと期待しています。

プロフィール

寄本健(よりもと けん)

東急株式会社 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ所属。1974年長野県諏訪市生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科、同大学院機械工学専攻出身。1999年東京急行電鉄株式会社(現、東急株式会社)に入社。ホテル事業、エリア戦略策定、学童保育事業、東横線副都心線相互直通プロジェクトに携わったのち、株式会社東急文化村に出向。複合文化施設Bunkamuraにて文化を事業する実務に携わった経験をベースに、'18年より渋谷再開発における主にソフト面、'19年よりエンターテインメント事業を担当、現職。

浜本理恵(はまもと りえ)

東急株式会社 ビル運営事業部 渋谷運営グループ 兼 渋谷開発事業部所属。1987年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学政治経済学部出身。2010年東京急行電鉄株式会社(現、東急株式会社)に入社。ICT事業、ケーブルテレビ事業、電力・ガスの小売事業の立ち上げに携わった後、'18年より渋谷再開発の情報発信、PR業務を担当。'13年には東横線渋谷駅跡地をイベント等で暫定活用する「ekiato」プロジェクトを担当。'20年より渋谷ヒカリエ等の文化用途およびマーケティングを担当、現職。

柏本高志(かしもと たかし)

株式会社パルコ執行役員渋谷パルコ店長。1963年、東京生まれ。早稲田大学教育学部出身。津田沼パルコ、名古屋パルコ、渋谷パルコの店長を務め、2015年執行役渋谷パルコ店店長に就任。2016年9月より渋谷プロジェクト(渋谷パルコ建替えプロジェクト)、渋谷店準備室の担当執行役を経て、2019年9月より執行役渋谷パルコ店店長を務める。2020年5月より同職。

手塚千尋(てづか ちひろ)

株式会社パルコ 渋谷店 営業課 課長。京都大学農学部出身。2006年株式会社パルコ入社。2014年コラボレーションカフェ『THE GUEST cafe&diner』事業を立ち上げ、「キキ&ララ カフェ」など連日大行列のカフェをプロデュースしコラボカフェブームの火付け役となる。2016年より渋谷パルコ準備室にて渋谷パルコリニューアルのリーシング、プロモーションを担当。新生渋谷パルコ内にファッション×アートスタジオ『2G』を立ち上げる。

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