なぜ渋谷は変われたのか? 未来の課題を解決する、未来デザイン思考

なぜ渋谷は変われたのか? 未来の課題を解決する、未来デザイン思考

インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:豊島望 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

行政と民間企業の橋渡しとなる「渋谷未来デザイン」

長田新子

―具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?

長田:いわゆる「プロジェクトデザイナー」と呼ばれるようなことですね。プロジェクトの全体像をデザインし、一緒に取り組む企業の担当者や渋谷区などとゴールを目指しながらトライ&エラーを繰り返していくっていう。

設立から2年程度しか経っていないですが、初年度(2018年)は全部で20ほどのプロジェクトを立ち上げました。例えば、渋谷区の創造文化都市事業に携わったり、渋谷区との共催イベント『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA』にはプロデューサーとして入ったり、新しい公共空間を使って実験的なことをしてみたり。「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」もそのうちの1つです。そういう取り組みを続けているうちにサポーターも増えてきて、一緒にやりたいという持ち込み案件も多くなっています。

こうした動きをしている組織は日本で珍しいので、地方の自治体が話を聞きに来ることもあります。我々としては、渋谷区でしかできないことを組み立て、さらにそのモデルケースを他の地域でも活用できるようにしていきたいと考えています。

―行政と企業の橋渡しとして、「渋谷未来デザイン」が機能していると。

長田:そうですね。企業が行政にダイレクトに話を持ち込んでも、進行するケースってほとんどなくて。というのも、企業目線でこういうことをやりたいといくら交渉を重ねても、それが町や住民にどう還元されるのかが明瞭じゃないと行政はGOを出せないんです。私は前職でそれをすごく感じていて。だから、渋谷区としての課題もわかるし、企業のことも理解できる私たちのような組織があることで、お互いがWIN WINになれるストーリーを体現できる可能性が高まるんじゃないかなと考えています。

5Gは、そのすごくわかりやすい例ですよね。KDDIが5Gを世の中に普及させて、事業としても発展させたいと考えていても、基地局を設置しないといけないし、新しいサービスも展開しないといけない。そうなったときにいろんなところに協力を要請しないと前に進めないわけですが、私たちがハブになることで、東急やPARCOのように場所を持っている企業や、5Gに適したコンテンツを制作できる企業をつなげることができるんです。

つまり、企業と1対1でやるのではなく、行政含めた複数のステークホルダーが一緒になってリソースを出し合い新しい価値を作ることが大事で、このような新しいサービスを街を舞台に推進するにはまさしく力を発揮できるかなと。長谷部区長も渋谷を実験の場として積極的に使ってもらいたいと言っているので、さらに多くの企業や団体が参加できるように環境を整えていきたいと思っています。

長田新子

―こういうことができるのも、渋谷らしいですよね。ここまで柔軟に対応できる行政はあまりいないと思います。

長田:私もそう思います。だからといって、なんでもかんでも受け入れているわけではもちろんなくて、やはり渋谷区に住んでいる人、働いている人、集う人にメリットのあるものを作っていくことが大前提です。そういう意味ではユニークなプラットフォームなので、理解されにくさもありましたが、徐々に認知を作ってきています。

―現状で30社以上が参加されているそうですね。

長田:参加される企業のみなさんには「名前だけ並べるのはやめてください」と言っています。このプロジェクトは、こういうことをやりたいという具体的なイメージやビジョンがあってこそ成り立つものなので。幸いにも今は、各社が自発的にいろんな提案をしてくださっているので、今後の実現度合いで満足度が変わってくるんじゃないかなと。今年の11月に『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA』というイベントを開催する予定なので、それをひとつのアウトプットの場にしたいと考えています。

―そういう場を活用して人を育てていくことも考えていたりするのでしょうか?

長田:そうですね。実際にそういう話も出ています。さまざまなプロジェクトを通してスキルを身につけることができれば、他の取り組みにも活用できるはずなので。渋谷区と連携している都市も日本各地にあるので、次につながるようにしていきたいと思います。

渋谷未来デザインが渋谷区と共催した、渋谷のナイトライフやナイトタイムエコノミーを考えるカンファレンス『WHITE NIGHT WEEK SHIBUYA』の様子。渋谷キャストガーデンに特設バスケットボールコートを設置し、女性バスケットボーラーや国内トップレベルのプレイヤーにフォーカスした都市型スポーツイベント『WHITE NIGHT PLAYGROUND powered by FLY』と、ARを使った新たなアートの体験企画『INVISIBLE ART IN PUBLIC by au』を連携開催した。
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渋谷~原宿~表参道エリアを中心に、多拠点でカンファレンスや体験プログラムが開催される都市回遊型イベント。
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プロフィール

長田新子(おさだ しんこ)

AT&T、ノキアにて情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、9月末にて退社し独立。趣味はスポーツ観戦・音楽ライブ鑑賞、ゴルフ、海など。

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