新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の生活は一変した。仕事の仕方、友達との会話、食事や買い物、エンタメやアートとの接し方などそれぞれに、多くの人がこれまでとは別の方法で日々を送っている。その中でも一つ、何が変わったのかといえば、おそらく「コミュニケーション」だろう。ソーシャルディスタンスを取ることが大前提となり、授業や仕事はもちろん、接客においてさえリモート化が進んでいる。おそらくこのリモート化という変化は、新型コロナが終息した後も残り続けるのではないだろうか。
この記事では、アフターコロナの新しい生活の最中に生み出されたいくつかのサービスの共通点を見つけ出していくとともに、これから商品やサービスがどう変わっていくのかについて考えてみたい。
(メイン画像:『レディ・プレイヤー1』 ©2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED)
コミュニケーションをリモート化する商品・サービスたち。これまで自然に共有していた「空気感」を模索
リモート化するサービスや商品を見渡したとき、共通して浮かび上がってくるのが「空気感」というキーワードだ。
ライブやアイドルの握手会など、エンタメ・カルチャーイベントのオンライン化はすでに進んでいるが、その中でも、「Re:Meet LIVE」というサービスは、ファンがイヤホンで音声を聞く「ウィスパーボイス」という機能や、「応援うちわ」という機能でタレントとファンのパフォーマンスを共有するようなことを目指しているほか、「ZAIKO LIVE」やYouTube Liveなどは、投げ銭というオンラインならではの仕組みによって、オンラインならではの新たな「空気感」を生み出そうとしている。
オンライン化したのはもちろんイベントだけではない。例えば、飲食業向けのオンラインサービス「はしご酒オンライン」は、食べ物や飲み物と同等以上に、トークやエンターテイメントといった要素の比重が高い飲食店の「空気感」を再現するため、ビデオチャットや課金機能を設けている。
『あつまれ どうぶつの森』『フォートナイト』など、新たなコミュニティとしてのゲームが、世界的に浸透し始めている
それらのサービスにもまして、「空気感」の力によって、オンライン上に新たなコミュニティを生み出しつつあるのがオンラインゲームだ。
緊急事態宣言による巣ごもり生活が続くなか、話題を集めたゲームが任天堂の『あつまれ どうぶつの森』。スローライフをテーマにした人気シリーズで、最新作となる同作では自分の島を作ることができる。さらには、オンライン機能を使って自分の島に友だちを呼んだり、友だちの島を訪れたりして遊ぶことが可能。つまり、ゲームのなかにもうひとつの居場所が作れるわけだ。
『あつまれ どうぶつの森』 Nintendo公式チャンネルより
また、『フォートナイト』も、オンライン上の居場所として注目を集めている。同作は100人が生き残りをかけて戦うバトルロイヤル型の対戦シューティングゲームである。『あつまれ どうぶつの森』とは真逆の、ほかプレイヤーと戦い続ける殺伐とした世界観のゲームだが、新たに「パーティーロイヤル」というのんびりできるゲームモードを追加した。このモードでは、友だちと島をブラブラし、チャットを行うことができる。また、2020年4月には、人気ラッパー、トラヴィス・スコットのバーチャルコンサート『Astronomical』が『フォートナイト』で行なわれ、リアルでなくとも「その場」にいると感じられる、没入感溢れたオンラインライブの演出や、同時接続数1230万という記録は「歴史的転換点」として大きく話題になった。
Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical (Full Event Video)
こうしたゲームのコミュニケーションの何が人を引き付けているのかと言えば、「あそび」の要素だ。ここでの「あそび」というのは、余裕やゆとりといった意味を持つ。私たちが人とのコミュニケーションを楽しんでいるとき、必ずしも会話そのものを楽しんでいるわけではない。友だちの家に行って特に何を話すでもなくお互いにマンガを読んでいたり、ファーストフードやファミレスで一緒にぼ~っとしていたり、何をするわけでもないそんな状況が意外と楽しく感じられる。これこそがまさに「空気感」の共有ではないか。言葉や会話だけがコミュニケーションなのではなく、「空気感」の共有もコミュニケーションなのだ。『あつまれ どうぶつの森』や『フォートナイト』が提供しているコミュニケーションは、まさにそのような「空気感」を作り出している。