アソビシステム代表が語る原宿と、アフターコロナの新しい地図

アソビシステム代表が語る原宿と、アフターコロナの新しい地図

インタビュー・テキスト・撮影・編集
黒田隆憲

きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、増田セバスチャンらが所属するアソビシステムは、原宿を拠点に「KAWAii文化」を世界に向けて発信してきたカルチャープロダクション。「イベント会社」や「芸能プロダクション」という枠組みにとらわれず、宿泊施設MOSHI MOSHI ROOMSのプロデュースや、原宿初の観光案内所「MOSHI MOSHI BOX」の開設などを通して、原宿という街が持つポテンシャルを引き出してきた。代表の中川悠介さんは、学生時代からクラブイベントなどを企画し、「人と人とをつなげる」をテーマに数多くの魅力的なコンテンツを展開してきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、物理的に人とのつながりが困難となってしまった今、彼は原宿にどのようなビジョンを描いているのだろうか。

YOU MAKE SHIBUYA連載企画「渋谷のこれまでとこれから」

新型コロナウイルスの影響で激動する2020年の視点から、「渋谷のこれまでとこれから」を考え、ドキュメントする連載企画。YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディングとCINRA.NETが、様々な立場や視点をお持ちの方々に取材を行い、改めて渋谷の魅力や価値を語っていただくと共に、コロナ以降の渋谷について考え、その想いを発信していきます。

YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング

キャットストリートのお店が全て閉まっている光景は、まるでゴーストタウンのようで本当に衝撃的でした。

―アソビシステムを立ち上げた中川さんが、初めて事務所を借りたのは「BOUNTY HUNTER」の上のオフィスフロアだったそうですね。以来、ずっと原宿を拠点にされているのはなぜでしょうか。

中川:小さい頃から原宿が好きだったのもありますし、何より原宿は「自由な街」だと思うんですよね。個性もあるし決まったルールもない。アパレルショップも、小さなワンルームから始めるところがたくさんあって。そういうことが出来る街ってあまりないじゃないですか。ストリートカルチャーの発信地であると同時に、一歩裏に入ると「下町っぽさ」も感じる。そういうところも好きなんです。

中川悠介(なかがわ ゆうすけ)<br>1981年東京生まれ。学生時代から取り組んでいたイベント運営経験を活かし、2007年アソビシステムを創業。原宿が生み出すポップカルチャーを世界に発信する一方、政府のクールジャパン戦略推進会議の構成員や、原宿初の観光案内所「MOSHI MOSHI BOX」の開設など多方面で活躍。きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、増田セバスチャンらを世界に輩出したことでも知られる。
中川悠介(なかがわ ゆうすけ)
1981年東京生まれ。学生時代から取り組んでいたイベント運営経験を活かし、2007年アソビシステムを創業。原宿が生み出すポップカルチャーを世界に発信する一方、政府のクールジャパン戦略推進会議の構成員や、原宿初の観光案内所「MOSHI MOSHI BOX」の開設など多方面で活躍。きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、増田セバスチャンらを世界に輩出したことでも知られる。

―「渋谷ではなく、原宿」という意識もありましたか?

中川:ありました。僕が会社を立ち上げた当時は渋谷のギャル文化が流行っていましたが、僕はそれには興味がなくて。それに、渋谷は駅を中心にどんどん再開発されていて、「作られていく街」というイメージだったんです。それに対して原宿は、自分たちで「作り出していく街」だと思っていて、そこもかなり重要でした。

―高校生の頃からライブハウスを借りて卒業イベントを開催したり、渋谷の「BAR SIFTY」や下北沢の「Basement Bar」で小さなイベントを企画したり、それが『美容師ナイト』(後の『RED by t.o.t』および『BLACK by t.o.t』)に発展していったりと、とにかく「人が集まる空間」が昔から好きだったと聞きました。

中川:新しいものが生み出されるのは、常に人の集まる場所だと思っているんです。誰かと誰かがつながって、交流が生まれる場所を作ること。それがアソビシステムの原点なのかもしれないですね。

中川悠介

―東京出身の中川さんにとって、原宿での最初の記憶って何ですか?

中川:初めて原宿に来たのは、おそらく小学生くらいの頃ですね。買い物に来るようになったのは中学生の頃。当時は「裏原ブーム」全盛で、藤原ヒロシさんが発信するカルチャーに憧れていました。原宿には「住む人」と「来る人」が混在していて、「住む人」はずっと変わらないけど、「来る人」はどんどん変化していっていますよね。特に、ここ数年はインバウンドが大きかったんじゃないかなと思います。今までにない現象でしたし。

―原宿が海外で注目されるようになっていったのは、もちろんアソビシステムの貢献も大きいと思います。中川さんご自身も、政府のクールジャパン戦略推進会議の構成員を務めたり、企業のカンファレンスやイベントなどで登壇したり、原宿のカルチャーを国内外へ周知するための施策を積極的に行っていますよね。

中川:おっしゃるように、原宿の文化を世界にもっと広げていきたいという気持ちからです。もともと原宿は外国人に人気のスポットで、世界的にみても面白い場所。それは、原宿で働き出すようになってより強く思うようになりました。

―原宿の中で、特に好きな場所やお店というと?

中川:このオフィスの裏にある焼き鳥屋の「鳥久」はすごく美味しくてよく行きます。それと、毎年9月に開催される『穏田神社例大祭』って知っていますか? 原宿で働く若い人たちが中心となり、神輿を担いで夜の原宿を巡行するお祭りなんですけど、それもすごく楽しいですよ。僕らアソビシステムの社員も、立ち上げの年からずっと参加しています。今年はコロナの影響で、おそらくやらないと思いますが。

―新型コロナウイルスの拡大により、4月には史上初めての緊急事態宣言が発出されました。その頃の原宿は、どのような状況でしたか?

中川:キャットストリートのお店が全て閉まっている光景は、まるでゴーストタウンのようで本当に衝撃的でした。その後、宣言が解除されて以降も外国人の観光客はほとんどゼロになってしまいましたね。「とんちゃん通り(原宿通り)」の飲食店では、お弁当を売り出すなど今までになかった光景が始まっていて。その一方で空きテナントも目立つようになり、これからどうなっていくのだろうという気持ちでいました。

―確かに、ここに来るまで歩いていた時も、なくなっているお店が多くて驚きました。

中川:僕らもエンターテイメントに関わる仕事ですので、めちゃめちゃダメージを受けています。リアルのイベントは出来ないですし、ちょっとこの先どうなるんだろうという感じですよね。今回、ライブハウスやクラブなどへのクラウドファンディングでの支援はたくさんやりました。100件くらいしたんじゃないかな。みんな本当に大変そうで、明るい話はほとんどないですよね。

―最初に中川さんは「誰かと誰かがつながって、交流が生まれる場所を作ること」がアソビシステムの原点とおっしゃっていましたが、今は「人の繋がり」を奪われた状態ですよね。

中川:本当にそうですね。もちろん、オンラインでの配信なども積極的にやってはいますが、リアルの重要性を思い知る一方です。ただ、ある意味では「チャンス」でもあるのかなと思っていて。今回のことで、オンラインでできること、オフラインでできることがあり、全てをオンラインで補うことは無理だと分かったじゃないですか。オフラインの必要性も絶対にある。そこが、アフターコロナの価値観でもあると思うので、そこは追求していきたいなと思っています。

―おそらく全てが元には戻らないと思うし、オフラインでの活動も仕組みを変えていかなければならない。そこをどうしていくかが問われますね。

中川:4月、5月は本当に何もなくて、「何もない」なんて状態になったことは今までなかったから、色々なことを考え直すきっかけになりました。例えばオフィスは本当に必要なのか。ほとんどのことが、リモートで事足りることがはっきり分かったじゃないですか。ちなみにうちは、従業員が4、50名なのですが今はほとんどリモートです。出社してくる人は、週一で交代制。今後、コロナが落ち着いてもこのままでもいいのかなと思いますし、オフィスも要るのかな? と考えている。これはコロナになって、強制的に自由がなくなったことで、ようやく実感できたことの一つですよね。コロナがなかったら、こんな機会はずっと訪れなかったと思います。

中川悠介

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『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』

23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

プロフィール

中川悠介(なかがわ ゆうすけ)

1981年東京生まれ。学生時代から取り組んでいたイベント運営経験を活かし、2007年アソビシステムを創業。原宿が生み出すポップカルチャーを世界に発信する一方、政府のクールジャパン戦略推進会議の構成員や、原宿初の観光案内所「MOSHI MOSHI BOX」の開設など多方面で活躍。きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、増田セバスチャンらを世界に輩出したことでも知られる。

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