アソビシステム代表が語る原宿と、アフターコロナの新しい地図

アソビシステム代表が語る原宿と、アフターコロナの新しい地図

2020/08/26
インタビュー・テキスト・撮影・編集
黒田隆憲

全てが平等みたいな日本の価値観から、お金や時間の使い方はもっと自分に正直になっていく。

―インタビューに関しても、コロナになった当初は「リモートやりにくいな」と思っていたんですけど、余程のことじゃない限り全く問題なくできるんですよね。今日は対面でやらせていただいてますが(笑)。

中川:そういう意味では、価値観もどんどん変わってきている気がします。人間関係もそうですよね。必要な人か、そうでないかを見直すチャンスでもある。これからの時代は自分で考えられるかどうかが、より重要になってくるのではないでしょうか。自分で考えて行動することは、当たり前のようで当たり前じゃないし、それが出来る人って実はそんなにいないんだなということは、コロナの時期に気づきましたね。

―あらゆることを、根本から見直す時間になりましたね。今後はどんな価値観が必要になっていくと思いますか?

中川:一時期「忖度」という言葉が流行りましたけど、忖度じゃなくて本当に自分のやりたいことをやって、目の前のことだけに集中するみたいな、そういう個々の価値観や時間が重要になってくる気がします。なんか今までって、会社の中で働いているやつと働いていないやつがいても、うやむやになっていたじゃないですか。コロナになって、それがますます顕在化されるし、そこから自由になれると思うんですよね。

―これを機に退職する人も結構いるみたいですね。

中川:そうなんですか。確かに個人の方が動きやすいとは思うけど、逆もあるんじゃないかな。フリーランスだった人たちが、安定を求めて就職するケースとか。

―確かに。ただ、東京で働く必要があるのか? と思っている人は多そうですよね。

中川:それは相当いますね。「東京って住む場所なのかな?」と思うことあるじゃないですか。働いたり遊んだりするための場所であり、これまでは時間効率を考えた上で東京に暮らす選択肢を取ることが多かったけど、時間の使い方がコロナによって変われば、効率の考え方も変わると思うんですよ。オフィスがもしなくなったら、わざわざ東京に住む必要もなくなりますよね。ちょっと郊外まで行ったほうが家賃も安くなるし。自分に使う時間とお金がこれからは増える気がしていて。そこを見直すチャンスでもあるのかなと思っています。

―中川さん自身はどうですか?

中川:悩んでますね。ただ一つ言えるのは、僕は東京生まれの東京育ちなので、東京への憧れは特にないんですよ。鎌倉とかに住んでも良さそうだなとか思ったりするし。今までだと「郊外暮らし」というと「意識高い系」みたいに揶揄されていたじゃないですか。でも、そういう言葉でラベリングする時代ではなくなっていくと思います。

―モノを選ぶ基準も変わっていくでしょうね。例えば洋服にしても、リモートワークが増えて「ステイホームグッズ」が売れていると聞きます。人と会うことも減り、普段着る服も「誰かに見せるため」というより「自分が本当に好きなものかどうか?」がより重要になってくるというか。

中川:よりダイナミックになっていく気がします。レストランにしても服にしても、高いものは高く、安いものは安く。全てが平等みたいな日本の価値観から、お金や時間の使い方はもっと自分に正直になっていく。zoom飲みも面倒くさいから参加しないっていう人も増えるだろうし(笑)。僕自身も「自分の時間の使い方ってなんだろう?」って思いました。今までのことを否定するつもりはないけど、「こんな新しい時間の使い方があったんだ」と思うこともあったし。

―それは、例えばどんなことですか?

中川:コロナになって、毎日1万歩、歩いてたんですよ。そんなに歩いたことのない人生だったので(笑)、結構楽しかった。それと、実は今度オンラインサロンを始めようと思っているんです。今まで全く興味なかったんですけど、自分の原点は「人を集めて人と喋ること」だったなと。それを考えたら今はオンラインサロンしかねえなって(笑)。自分が発信するだけじゃなくて、参加者と互いに吸収し合える関係を築くという意味でも「クラブイベントの現代版」というか、新しい社交場なのかなと思ったんです。

―以前のインタビューで中川さんは、「個の時代であることは間違いない」「そんな中で、アソビシステムという共同体=コミュニティーがやれることの価値を考えたい」とおっしゃっていて。人と人とがつながる手段が変わっていく時代だからこそ、そういう「小さなコミュニティ」が必要になっていくのかもしれないですよね。

中川:もちろん、六本木へ行って飲むのが好きな人も変わらずいると思うし、逆に鎌倉に引っ越して週一で東京に来ればいいという人もいる。もっと田舎へ行って野菜を作る暮らしを選択する人もいて、全て成立する世の中になっていくのが面白いのかなって。特に日本人は、これまで周りを気にして生きてきたけど、これからはそうじゃなくなっていくのかもしれない。

―選択肢が増えて、各々が自分だけの物差しを持てるようになれば、日本も変わっていけるかもしれないですね。

中川:そう思います。

―最後に、これからの原宿に期待すること、今後のアソビシステムの抱負について教えてください。

中川:やっぱり、この街が持つパワーですよね。そこに期待するし、僕らもどんどん新しいことにチャレンジしていきながら、会社の概念や芸能事務所の概念を超えて、街との共存のしかたや街にいる意味を考えていきたいと思っています。

例えば、アソビシステムは2年前から原宿で民泊をプロデュースしているんですけど(「MOSHI MOSHI ROOMS」)、原宿で「泊まる」体験をしてもらったら、次は「働く」体験、そして「住む」体験と、いろんな体験をして欲しいと思っていて。さっきオフラインの大切さについて話しましたが、今後は「体験」がより価値のあるものになっていくと思うんです。これまで原宿では「買う」ことが価値だったけど、原宿での「体験」にこそ価値があるようになればいいなと。この街でできる「体験」を、これからも探し続けていきたいです。

中川悠介

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『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
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プロフィール

中川悠介(なかがわ ゆうすけ)

1981年東京生まれ。学生時代から取り組んでいたイベント運営経験を活かし、2007年アソビシステムを創業。原宿が生み出すポップカルチャーを世界に発信する一方、政府のクールジャパン戦略推進会議の構成員や、原宿初の観光案内所「MOSHI MOSHI BOX」の開設など多方面で活躍。きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカ、増田セバスチャンらを世界に輩出したことでも知られる。

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