NITROが渋谷の思い出を回想「無駄な時間から文化が生まれる」

NITROが渋谷の思い出を回想「無駄な時間から文化が生まれる」

2020/11/10
インタビュー・テキスト
宮崎敬太
撮影:天田輔 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

コロナ禍の中でメンバーそれぞれの考えた日常の変化

―ニトロとして曲をリリースしてから、みなさんにとって渋谷の景色はどのように変わりましたか?

XBS:実はあまり覚えてないんですよ。ニトロとしてデビューしてからはすべてが走馬灯のように、怒涛に過ぎていったイメージで。受け手のことなんて全く考えず、好きにやってましたね。でも今思うと、とにかく僕らは出てきたタイミングがパーフェクトだったんですよ。CAVE(渋谷のクラブ)までを含めた狭いエリアでヒップホップの濃いカルチャーが醸造されてて、爆発するタイミングを待ってた。ニトロでデビューするとき、そういう時代の雰囲気が勝手にできあがってた。

SUIKEN:先輩たちが黄金期で、俺たちはその時代の一番美味しいユースだった。先輩はイケてる洋服屋やクラブの店長クラスだから、「こんちは」って感じで気軽にどこでも行けたし(笑)。

DABO:でも、実は俺ら自身はそこまで渋谷を打ち出してないんですよ。ニトロ=渋谷というイメージが勝手についてただけで。ただ、当時の俺らは本当に長いこと渋谷にいました。服屋とかレコ屋とかダベれる空間がいっぱいあって、マンハッタンの倉庫に6時間くらいいるのは普通だったし(笑)。そういうライフスタイルが、自然とラップになっていて。渋谷出身はDJ HAZIMEだけだけど、俺らが「渋い渋谷の黒い軍団 NITRO旅団」と言っても、それは言い過ぎではなかったと思う。

DABO
DABO

SUIKEN:あと単純にManhattan Recordsからインディーデビューしてるからっていうのも大きいだろうね。当時と今では存在感が全然違ったから。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの“NITRO MICROPHONE UNDERGROUND”MV

―そんな渋谷も20年という時間とともに、大きく姿を変えました。そこに新型コロナウイルスの感染が拡大して……。ライフスタイルの変化を余儀なくされ、街からは人がいなくなりました。みなさんにはどんな変化ありましたか?

SUIKEN:コロナは俺らだけがどうこうって話じゃなくて全世界的にエグいことになってるってことを大前提にして言うと、俺はライフスタイルのすべてが変わりましたね。手を洗う。マスクをする。外出はできるだけ控える。うちは家族に疾患を持ってる人がいるから、感染対策をかなり厳しく意識してます。でもみんなが引きこもったら、今度は街が死ぬのも理解できるんで、人それぞれで信じたように行動するしかないんだよね。

SUIKEN
SUIKEN

DABO:俺もライフスタイルは変わったんだけど、それはコロナ云々ではなく、昨年、自分に子どもができたことが大きいですね。ちょうど1歳になるかならないかくらいの頃に感染が広まりだして。妻が妊娠してるときからクラブにあまり行かなくなったんですけど、子どもが生まれてから朝は強制的に早起きにもなりました。妻や子どもをケアしなきゃいけないから、当然夜は外出しなくなるし。もちろん手洗いやうがいは前よりもするようにはなりましたけどね。あとマスクに関しては、喉のケアもあって昔から着けてて。だけどそのときはさすがに真夏にもマスクすることになるとは思わなかったな(笑)。

BIGZAM:俺もコロナ以降は外で遊ばなくなりましたね。あと自分のことを考えて、食事を変えたんです。それで10キロ以上、体を絞りました。

SUIKEN:それは自分に向き合う時間が増えたのも大きいんじゃない?

BIGZAM:そうかもね。前よりもいろんなこと考えるようになりましたし。その意味では、自分にとっては活動を自粛したのはちょうどよかったのかもしれない。いろんな面で大変な状況になってる人が世界中にいるから、もちろんコロナが拡大しないほうがいいのは当たり前の前提なんですけど。この前セレクトショップの社長に街でばったり会って話を聞いたら、こんなに(洋服の買いつけに)行かなかったことないって言ってました。実際、アメリカのショップもほとんど営業してないらしいです。

BIGZAM
BIGZAM

XBS:自分はフリーランスでカメラマンもしてるから、会社勤めしてる人と比べるとライフスタイル自体にそこまで大きな変化はありませんでした。でもやっぱり当たり前が当たり前でなくなったので、みんな自分の生き方を考え直さざるを得ないと思う。ネガティブなことばかりにフォーカスするのではなく、僕も自分と向き合ってポジティブに物事を捉えるようにしていますね。好きなことのためにどう時間を使うかとか。あと同時に自分が好きな街が元気でいられるようにどうすればいいかってことも考えましたね。街になんらかのお金を落としていく行為をしていかないと、どんどん店のシャッターが閉まってしまう。変わる世界でなにができるか、どう変わるのか。僕らも今回初めて無観客ライブをやってみたし。

XBS
XBS

DABO:テレビの収録みたいな感じだったね。

BIGZAM:でもああいう形でのライブは初ですよね? スタジオライブもしたことない。

SUIKEN:観客ありのイベントのオファーももらうけど、正直出ていいのかなって気持ちがあって。はっきり言ってライブなんて余裕だし、全然やりたいのが本音ですよ。でも、もしもそこでクラスターが発生したら、そのハコ自体がなくなる可能性があるから。自分たちのことよりも、そっちへの心配が大きくて。だからこの前のDOMMUNEでの無観客ライブも実験的にやってみたんです。実際自分たちがどう見えてるのかは想像つかなかったけど、現場にちょっとだけいたスタッフは盛り上がってる感じだったから、だいぶ助かりましたね(笑)。これからはアーティストサイドも無観客ライブでの盛り上げ方を学びつつ、スタッフも学びつつ。だんだん上手くなっていければと思っています。

XBS:イベントができないならできないなりに考えるしかない。変化が必要なら順応していきたいですね。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND“歩くTOKYO”MV

サービス情報

『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』

23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

リリース情報

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND
『ナンカナイノカヨ』

2020年7月31日(金)配信
レーベル:acehigh records

プロフィール

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND(にとろまいくろふぉんあんだーぐらうんど)

BIGZAM、DABO、DELI、GORE-TEX、MACKA-CHIN、SUIKEN、XBSの7名から成るヒップホップグループ。2000年に1stアルバム『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』をリリースし、大きく話題を集める。2012年に一時、活動休止。デビュー20周年にあたる2019年に活動を再開。最新シングルは、7月31日にリリースされた『ナンカナイノカヨ』。

感想をお聞かせください

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Categories

カテゴリー

『CUFtURE』(カフチャ)は、au 5Gや渋谷未来デザインなどが主導する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」とCINRA.NETが連携しながら、未来価値を生み出そうとする「テクノロジー」と「カルチャー」の横断的なチャレンジを紹介し、未来志向な人々の思想・哲学から新たなヒントを見つけていくメディアです。そしてそれらのヒントが、私たちの日々の暮らしや、街のあり方にどのような変化をもたらしていくのか、リサーチを続けていきます。