大きな挫折を味わったれもんらいふ千原を、刺激し続けた「街」

大きな挫折を味わったれもんらいふ千原を、刺激し続けた「街」

2020/08/24
インタビュー・テキスト・編集
黒田隆憲
撮影:天田輔 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)

ここを地元としてずっと生きている人もいるんだなと思うと不思議な感覚が湧いてくる。

―東京のカルチャーを「感じる」場所は、千原さんにとっては「渋谷」だったのですね。

千原:学生時代からの憧れの街ですしね。建築家の友達が、表参道に最初に小さい事務所を借りたときに「自分の目標は『PRADA』のショップを作れる人(スイスの建築家ユニット ヘルツォーク&ド・ムーロン)になること」と言っていて。「毎日『PRADA』の前を通る場所に事務所を作ることで、自分を奮い立たせているんだ」と言っていたんです。

それを聞いたときに、僕も渋谷「109」のシリンダー広告や、ラフォーレ原宿の看板を「いつか作るぞ」と思うためには、そこから遠くに住んでいてはダメだなと思った。本当に日々、死にそうなくらい忙しかったけど、行き帰りにそこを通るだけでもクリエイティブな気持ちになれたんですよね。

千原徹也

―千原さんが最初に衝撃を受けた、1990年代から今なお変化し続けている渋谷の、どんなところに魅力を感じますか?

千原:どんどん再開発され、新しいスポットが出来ていく良さがある一方で、意外と下町っぽいところも渋谷にはあるんですよね。並木橋のあたりは「田舎の風景だな」と思う(笑)。これって、関西に住んでいた頃には想像もつかなかったことです。右を見ればビルが立ち並ぶ大都会なのに、左を見ると古い住宅街がある。そのコントラストに「安心感」と「高揚感」の両方が湧き上がってくる。そこが、他の町にない魅力じゃないかなと思いますね。

―先日、アソビシステムの中川さんにインタビューした時も、毎年夏には御神輿を担ぐ祭りがあるなど、原宿は「下町っぽさ」がありながらカルチャーの最前線にいるところが魅力だとおっしゃっていました。

千原:この事務所のオーナーや、近くにある魚屋「のじま」のじいちゃん、コミュニティ施設「リフレッシュ氷川」に集まるじいちゃんばあちゃん、その1階にある「喫茶並木」のオーナーたちは、みんな若い頃から友人同士なんですよ。並木橋周辺には地元のコミュニティがちゃんと残っている。

僕も、お祭りの季節になると彼らに混じって神輿を担いだり、年末には忘年会に参加させてもらったりしていて。色々と昔話も聞かせてくれるんです。東京大空襲の時は、恵比寿にあるビール工場から火が出て2日くらい消えず、ここからでも見えたとか。渋谷は「新しい街」というイメージがあるけど、ここを地元としてずっと生きている人もいるんだなと思うと不思議な感覚が湧いてくるんですよね。

―この辺りは最近「SHIBUYA STREAM」ができたりして、どんどん再開発が進んでいるイメージでしたが、変わらない部分もあるのですね。

千原:変わる刺激も欲しいんですけど、変わらない安心感も必要で(笑)。その両方が渋谷にはあるんですよね。

千原徹也

―そんな中、今年になって新型コロナウイルスが流行し、渋谷の街はどう変わっていきましたか?

千原:コロナになってからは、スクランブル交差点とか全く行かなくなっちゃったんですよ。たまにタクシーで通ると外国人はほとんどいないし、街ゆく人の雰囲気が明らかに変わってしまいましたよね。僕の友人には飲食店を経営している人もたくさんいるけど、先日も「営業時間は22時まで」なんて要請が出てしまい、みんな大変な思いをしている。危機が身近に迫っていることを感じています。

今後、世の中が元どおりになるとは誰も思っていませんよね。渋谷も変化しながら適応していくだろうし、そういうフレキシブルなところがこの街の魅力でもある。今はまだコロナ前に作られたものばかりだから、色々と歪みが出てしまっているけど。例えば「MIYASHITA PARK」のような、街に開かれた公園ができるのを僕は楽しみにしていたんですけど、今は検温しなければ入れなくなっています(笑)。今後「コロナありき」で作られるものは、新たな発想が必要になっていくんじゃないかな。

サイト情報

『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』

23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

プロフィール

千原徹也(ちはら てつや)

1975年京都府生まれ。広告、ブランディング、CDジャケット、装丁、雑誌エディトリアル、映像など、デザインするジャンルは様々。H&M GOLDEN PASSキャンペーン、「Onitsuka Tiger×Street fighter V」ディレクション、adidas Originals店舗ブランディング、久保田利伸 「Beautiful People」、桑田佳祐 「がらくた」、関ジャニ∞ アルバム「ジャム」、吉澤嘉代子MV&ジャケットデザイン、ウンナナクールのクリエティブディレクター。その他にも、アートマガジン「HYPER CHEESE」、「勝手にサザンDAY」企画主催、J-WAVEパーソナリティ、れもんらいふデザイン塾の主催、東京応援ロゴ「KISS,TOKYO」プロジェクトなど、活動は多岐に渡る。

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『CUFtURE』(カフチャ)は、au 5Gや渋谷未来デザインなどが主導する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」とCINRA.NETが連携しながら、未来価値を生み出そうとする「テクノロジー」と「カルチャー」の横断的なチャレンジを紹介し、未来志向な人々の思想・哲学から新たなヒントを見つけていくメディアです。そしてそれらのヒントが、私たちの日々の暮らしや、街のあり方にどのような変化をもたらしていくのか、リサーチを続けていきます。