SHIBUYA109が、コロナ禍で若者に伝えたいメッセージとは

SHIBUYA109が、コロナ禍で若者に伝えたいメッセージとは

2020/09/01
インタビュー・テキスト・写真・編集
黒田隆憲

今こそ若い世代や働く仲間たちの命を守り、そして私たちから彼らにこのウイルスの危険性を伝えたい。そういった思いから、休館することといたしました。

―新型コロナウイルスの影響で多くの困難を経験されていると思います。ここまでどういった状況だったのでしょうか。

木村:3月にはSHIBUYA109渋谷店も営業時間の短縮を始めていました。3月25日に都知事が初めて週末の外出自粛要請を発表しましたが、そのころは若い人たちにコロナの危険性がきちんと伝わりきっていないことが大きな問題となっていました。私たちは熟慮の結果、「みんなで今、できることを」をスローガンに、その週の週末を休館することにしました。まずは私たちが休館することで、若い世代の皆さんに「新型コロナウイルス」の危険性を伝えるというメッセージと、お客様・働くスタッフの皆さんの安全・安心を考えた上での判断です。

翌週の土日も再び外出自粛要請があり、SHIBUYA109渋谷店も休館といたしました。週明け4月6日からお客様も極端に減った中、お客様の安全や、店舗で働いている皆様の安全を考えると、「平日に営業する必要があるのか?」という疑問と現実に挟まれ、3月にいち早く休館を決めた当社として、今の状態は矛盾していないのか…と悩み続けました。そこには我々を取り巻くお取引先様との関係、お取引先様の経営状態、商業施設全体の問題……等々、簡単に「全て休館」という判断をできない状況もありました。

―厳しい状態が続いていたのですね。

木村:それでも今、「SHIBUYA109ブランド」がすべきことは何か、若い世代がこれからも笑顔で私たちのお店をご利用いただくために、今こそ彼らや働く仲間たちの命を守り、そして私たちから彼らにこのウイルスの危険性を伝えたい。そういった思いから、4月4日から12日まで休館することといたしました。その後、政府からの緊急事態宣言を受け、5月中旬までの休館となりましたが、私たち自らが休館を決断すること、そして発信することで、私たちの役割を果たしていくことといたしました。本当に皆で苦悩し、苦渋の上の決断でしたね。

おかげさまで、6月1日から営業を再開いたしました。私たちがこうして再開できるのも、医療従事者をはじめ、様々な最前線で対処して下さっている方々のおかげであり、感謝の気持ちを込めて開店前に全スタッフで「クラップ・フォー・ケアラーズ」を行ないました。また、ご来店いただいたお客様のために、検温や手指消毒、マスクの徹底、店内換気などの対応を徹底いたしました。

―特に困っていらっしゃること、そしてその解決のために必要なサポートで期待されていることを教えてください。

木村:SHIBUYA109は、出店者様あってのもの。特にアパレル各社様が厳しい経営状況であるのは、大変心配なことです。7月は、特に都心部の商業施設の来館者数が激減しています。安全対策は充分施していますが、今の状況下では集客施策もできず、とても苦しい状況が続いています。店舗で働いているスタッフの皆様も、毎日出勤時に検温をして働いていただいております。マスクの着用は徹底していますが、恐怖感を持って働いています。

SHIBUYA109では「みんなで今、できることを」という思いのもと、特に若い世代の皆様の応援をしていきたいと思っています。そうしたことで、若い世代がこの新型コロナウイルスに対して常に注意を払い、そのことが感染拡大防止に少しでも役立てればと思っています。

―今回の出来事で、渋谷の文化にはどのような変化があると思われますか?

木村:渋谷は「どうやって多くの人に集まってもらうか」という課題を、街全体で取り組んできて成果をあげてきました。様々な業界の方たちが、それぞれの立場で個性を活かし、イベントなどを開催しながら「渋谷らしい人集め」をしてきたと思います。これは一企業や施設があるからということではなく、街が持つ地形的な特徴や、歴史や文化と、街の皆さんの努力だったのだと思います。それが新型コロナウイルスの影響で、全ての根幹であった「人が集まる」ということを抑制されてしまいました。

私達もとても困惑し、はっきりとした将来のあり方は描き切れていませんが、再び世界中から渋谷に人が集まるにしても、今までとは同じではないことは予想されます。ただ、この期間にエンタテイメントを通して「人が集まれる」ことの大切さ、どれだけ自分たちの人生を豊かにしてくれていたかにも、多くの人たちが気付いたことと思います。今後コロナを乗り切った後でも、それぞれがそのリスクを常に警戒し、その中で最大限楽しめる場にしていかなければなりません。

―本当にそう思います。

木村:一方でデジタルとリアルの境がなくなるのも、コロナ禍を経てスピードアップしていくことと思います。リアルでしか体験できない感動を、お客様自身がデジタルで拡散したり、デジタルで探して購入したものをリアルで手に入れ、そこでお店のアドバイスをもらったり、ショップスタッフがコーディネート提案したものを、デジタルですぐ手に入れることができたりと、多様なショッピング体験に変化していくかと思います。

また、渋谷の文化の中心を担っていた若い世代の皆様は、この期間を自宅で過ごすことで、社会の問題にも目に向けるようになったと言われています。世界の多くの問題解決に、自分たちの世代が中心となって自分事として向き合っていることにも気づき始めました。未来の地球は彼らのものです。彼らが未来も幸せに生きていけるよう、サステナビリティやジェンダーレスといった様々な課題を、分かりやすく理解を広めながら、彼らと共にSHIBUYA109としてこのようなSDGsの課題に取り組んでいくことも重要だと思います。

―最後に、守りたい渋谷の魅力やその理由を教えてもらえますか?

木村:渋谷の街が持つ多様性を受け入れ、それが引き起こす「カオスな世界」を守り、発展させていきたいです。そんな魅力に引き寄せられて、「夢」を持って集まる世界中の若い世代の個性を尊重し、その独自性を磨き上げる環境を作りながら、その「夢」を持って渋谷から世界に羽ばたいてもらいたい。そんな街であり続けたいですね。

木村知郎

サイト情報

『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』

23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

店舗情報

SHIBUYA109

営業時間 11:00~20:00
(カフェ・レストランは22:00まで、プレイガイドは20:00まで)
※営業時間変更となる可能性がございます

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-29-1
休館日:元日を除き、年中無休

プロフィール

木村知郎(きむら ともお)

1964年、東京・世田谷区生まれ。大学卒業後、東京急行電鉄(現東急)に入社。様々なセクションの経験を経て、2016年に「東急モールズデベロップメント」へ異動し、SHIBUYA109事業本部長に就任。2017年4月、「東急モールズデベロップメント」から分社化する形で「SHIBUYA109エンタテイメント」が誕生し、同時に代表取締役社長に就任。

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