Kダブシャインが抱える複雑な感情 変わりゆく地元の風景に何を想う

Kダブシャインが抱える複雑な感情 変わりゆく地元の風景に何を想う

2020/09/04
インタビュー・テキスト・編集
タナカヒロシ
撮影:玉村敬太

渋谷じゃなければ、こういう人間性になっていないかもしれない。だから、地元に何か返したい。

―これからの渋谷はどうなるか、思うところはありますか?

Kダブシャイン:本当に予想できなくなっちゃいましたね。どんどん未来都市みたいな感じになっていくのかなと思ったけど、リモートが当たり前になって、渋谷から家賃の安い場所に引っ越す会社も出てきているみたいですし。そうすると(駅前の再開発を主導する)東急が思い描いていたような絵にはならないわけですよね。

都会に出てくる人が減って、なんでも家の近所でできる方向に投資が行くようになったら、渋谷に出てくる用事もなくなって、たまプラーザのほうが面白いよとか、神奈川県のほうが住みやすいよっていうことになるかもしれない。でも、そうなるとつまらないですよね。やっぱり渋谷は音楽とか映画とか、エンターテイメントが似合うと思うので、それで人が来る街になったらいいんじゃないかな。

―やっぱり盛り上がっている渋谷のほうが好きですか?

Kダブシャイン:いや、そういうのは他のところに行っていいですよ。でも、世界の潮流はローカル化していくのかなと感じるから、グローバリゼーションは過去の遺産になるかもしれない。いまはそのせめぎあいなのかなと思います。だから、しばらくは渋谷の輝きはなくならないと思います。

Kダブシャイン

―そういう節目のなかでも、渋谷のここだけは変わらないでほしいと思うところはありますか?

Kダブシャイン:緑が多いところかな。代々木八幡神社とか明治神宮とかもパワースポットと言われてて、おそらくいい気が出ているんですよ。最近は代々木公園周辺で繁盛している店も増えたし、あのへんの街としての価値は上がっていると思うんですよね。そうなると邪魔者も増えるから難しいんですけど。

―栄えればよそ者が入ってくるし、かと言って栄えないと不便になるし。

Kダブシャイン:まぁ、アーティストとかが住んで、そこからいろいろクリエイティブなものが生まれるっていうのが、街の肩書としてはいちばんかっこいいかな。ミュージシャンだ、作家だ、デザイナーだっていうのがいっぱいいて、その人たち同士で作ったものがムーブメントになる。

ちょうど僕も、渋谷発信のコンピレーションアルバムを作っているところなんですよ。渋谷区長に任命されて、いじめとか、生活のなかのトラブルとかに関して、子どもたちの駆け込み寺になるようなプロジェクトを作っていて。その一環として、各アーティストに子どもたちに向けてのラップを作ってもらって、小学校とかに行って披露して、「いじめなんてかっこ悪いことするんじゃねーぞ」みたいなことを啓蒙するんです。

―Kダブさんは過去にも『SAVE THE CHILDREN』というミニアルバムを出されていますよね。

Kダブシャイン:幼児虐待防止のチャリティで『CHANGE THE GAME』というコンピレーションアルバムを出したこともあるし、その流れですね。やっぱり渋谷を守りたい、渋谷の子どもたちを守りたいっていう気持ちがあるんです。この地域に育てられて、俺という人間ができあがっているので。

―根底には渋谷で生まれ育ってよかったという感情があるんですか?

Kダブシャイン:僕のキャラクターの半分は渋谷じゃないですか。渋谷じゃなければ、こういう人間性になっていないかもしれない。だから、地元に何か返したいんですよね。

Kダブシャイン

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『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
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プロフィール

Kダブシャイン(けーだぶしゃいん)

1968年5月8日生まれ、東京都渋谷区出身。17歳でアメリカに留学し、以降約8年間を断続的にアメリカで過ごす。1993年にZEEBRA、DJ OASISとともにキングギドラ(現KGDR)を結成、リーダーを務める。1995年にアルバム『空からの力』でデビュー。社会性の強いメッセージと日本語での押韻を完成させた作品として、ヒップホップシーンに多大な影響を与える。その後もソロやRadio Aktive Projeqtで活動するほか、コメンテーターとしても数々のメディアに出演。2020年7月から放送中のテレビ朝日『フリースタイルティーチャー』では、ヒップホップの歴史や伝説的人物を解説する「教授」として活躍。

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