音楽に関していえば、必ずしも東京でやっていく必要はもはやないと思っていて。
―コロナもひと頃よりは落ち着きましたが(取材は11月5日に行われた)、2月3月あたりはどうしていましたか?
山㟢:内装工事、店舗出店はタームが長く、コロナ以前に始まっていたプロジェクトはそのまま続行していたので毎日の仕事量に関しては変わりませんでした。それがひと段落した頃には緊急事態宣言も解除され、世の中の動きもちょっと良くなってきて。残念ながら閉店してしまったお店も多かったですが、新たに商売を始めようとしている人たちからもオファーをいただいていたので、仕事自体がないという感じではなかったです。もしかしたら、コロナがなければもっと案件も増えて業績が上がっていたかも知れないし、今となっては知る由もありませんが、会社はなんとか回っていました。
toeとしては、全国120箇所以上のライブハウスと連携し、支援するプロジェクト『MUSIC UNITES AGAINST COVID-19』を4月19日に立ち上げ、6月30日(火)までに4万5000件を超える支援をいただきました。先日のDOMMUNEでの配信イベントも含め、最近は演奏する機会も少しずつ増えてきていますね。
―今後、音楽の届け方はどうなっていくのでしょうね。
山㟢:音楽に関していえば、必ずしも東京でやっていく必要はもはやないと思っていて。アメリカなんて土地が広いから、エリア毎の音楽シーンにスタイルがあって色濃く特徴が出ていますけど、それに近いことが日本でもインディ音楽シーンでは何十年も前からあって、「名古屋に行ったらあのバンドがいる」「仙台に行ったらこのバンドと共演できる」というような。それに、地方での音楽活動には大きなメリットもあると思っていて。
―例えばどんなところでしょうか?
山㟢:東京だとバンドが多いから、こう、埋もれてしまうこともあると思うけど、土地に根差してやっていれば全国的に認識してもらえる割合は増えますよね。誰かが海外のバンドを招聘して全国ツアーをやる際には、その土地のバンドがオープニングアクトで共演する機会もある。そういうバンドがいるおかげでそれぞれの土地でシーンが形成され、新しい世代に受け継がれていけばまた新しい音楽が生まれてくる。そうやって独自のカラーが際立っていくと思うんです。
昔は、バンドの目指すモデルケースといえば「東京へ行って、メジャーデビューしてテレビに出て」みたいな感じなのかもしれませんが。今はいろんな情報が共有されたことで、地元で良いバンドをやっていればそのシーンが横に繋がって全国的、世界的な規模になりうると思う。
サービス情報
- 『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
-
23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。
プロフィール
- 山㟢廣和(やまざき ひろかず)
-
2000年、美濃隆章(Gt)、山根敏史(Ba)、柏倉隆史(Dr)とともにインストゥルメンタル・バンドtoe結成。テクニックに裏打ちされたアンサンブルと圧倒的なライブ・パフォーマンスによって国内外で大きな支持を集める。自主レーベルMachuPicchu Industriasを立ち上げて音源を発表。海外ではTopshelf RecordsなどからCDやレコードをリリースしている。2007年に本人主宰のデザイン会社「METRONOME INC.」を設立。