toe山㟢インタビュー アフターコロナの活動や、残すべき文化について

toe山㟢インタビュー アフターコロナの活動や、残すべき文化について

2020/11/27
インタビュー・テキスト・写真・編集
黒田隆憲

今かろうじて残っている裏路地とか、ああいうものを文化遺産として保護すべきなんじゃないかな。

―よく「どこどこのハコを埋められたら音楽だけでも食べていける」みたいな、動員数が目安として使われることが多いですよね。

山㟢:でも、ライブってそんなにお金にならないんですよ。例えば1200人キャパでワンマンやって、フロアが全部埋まったとしても、1人100万円もらえるわけじゃない。会場費やスタッフへの謝礼、機材レンタル費用など必要経費を引くと、バンドに入ってくる金額も多いわけではないし、もしそれをメンバーで割って分配しても、生活できるような金額にはならないですね。

でも今、コロナ禍によってバンド自体も大変ですが、イベンターさんやライブハウスのスタッフさん、PAさん達の方ももっと大変な気がして。もう1年近くまともにライブは開催されてないし。なんとかならないかなと思ってます。

山㟢廣和

―今回、コロナ禍でリモートワークなどもかなり進みましたし、「東京で音楽活動する意味」についても改めて捉え直す機会なのかも知れない。

山㟢:CM音楽や劇伴などを作る音楽家だったら、もう東京に住む必要性なんて全くないですしね。土地代が安いエリアで広いスタジオを借りたり、自分で建てたりすることも東京より簡単でしょうし。自分がしっくりくる土地を見つけて引っ越しちゃうのも一つの方法だと思う。

とはいえ俺は、東京にも憧れはあるんですよ(笑)。大人になってからずっとこの街に住んでいるんですけど、いまだに「東京! かっこいい!」みたいな漠然とした幻想みたいなものを持っていて。世代的なものなのか、自分が神奈川県出身だからなのかも知れないけど。

―色々と変わっていく中、山㟢さんが残しておきたい渋谷の良さとは?

山㟢:昔は「渋谷や恵比寿、代官山にしかないオシャレなお店!」みたいなことが成立していたけど、今やどの県に行っても、最先端の情報を共有した店があるのは普通になっている。なので、逆に東京には古くからあるものをちゃんと残しておいて欲しいですよね。渋谷の駅前とかも、のんべえ横丁だけは一部そのまま残っているじゃないですか。意図したものではないかもしれないけど、ああいう景色はいいなぁと思う。すべてを新しくしちゃうと、どの街も同じような感じになって面白みがない。それよりも、今かろうじて残っている裏路地や、円山町のごちゃっとしたところ、三茶の三角地帯。ああいうのを文化遺産として保護すべきなんじゃないかな。

―文化遺産ですか(笑)。

山㟢:また別の話かもしれませんが……街というか人が生活する場所に存在する、ある意味「闇」みたいなものと文化って隣り合わせにある感じがして。そういうものを無理やり「存在しないもの」として新しくクリーンなもので覆い隠そうとしても、実際にはどこかには存在しているわけで。

逆に見えにくくしちゃっていることで、その負の部分は陰湿で濃厚になっていく気がするんですよね。すぐそばに存在して見に見えているということが、実は健全な感じもしますよね。

―見えなくなったことで、危険かどうかも分からず足を踏み入れてしまうことだってあり得る。

山㟢:そう思います。余計にタチが悪いですよね。全部ピカピカにしてもしょうがないんじゃないかな? と思うし、その歪みは別の形で出てくる気がする。「クリーンな街」と言われても「そんなわけねーじゃん」って思うし。建物の強度や当事者的、ご近所的に実際には色々問題もあるとは思うので一概には言えないですが、現存している昔からあるもの全てを壊さずにあえて残していくという考えもあるのではないかなと思います。

山㟢廣和

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『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
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23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

プロフィール

山㟢廣和(やまざき ひろかず)

2000年、美濃隆章(Gt)、山根敏史(Ba)、柏倉隆史(Dr)とともにインストゥルメンタル・バンドtoe結成。テクニックに裏打ちされたアンサンブルと圧倒的なライブ・パフォーマンスによって国内外で大きな支持を集める。自主レーベルMachuPicchu Industriasを立ち上げて音源を発表。海外ではTopshelf RecordsなどからCDやレコードをリリースしている。2007年に本人主宰のデザイン会社「METRONOME INC.」を設立。

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